陣痛への不安から学ぶ呼吸法
初めての妊娠、順調に9ヶ月を過ごし、いよいよ出産の時が迫ってきた。待ち遠しい赤ちゃんの顔を想像するだけでわくわくした一方で、陣痛への不安も徐々に大きくなっていった。
「陣痛は本当につらいのかしら?」「無事にお産ができるかしら?」そんな不安を打ち明けると、母はにっこり笑って、陣痛の呼吸法を教えてくれた。
「陣痛が来たら、こうやってゆっくり深呼吸するの。吸って、吐く。吸って、吐く。リズムを守りながら呼吸を続けるだけ。そうすれば、痛みに耐えられるから」
母はゆったりとした呼吸のリズムを見せながら、言葉を続けた。
「私も三人のお産で、この呼吸法を実践したわ。きつい時は夫に手を握ってもらいながら、一緒に呼吸のリズムを合わせていたの」
そう言って母は、父の手を取り、懐かしい思い出に浸った様子だった。
予定日を超えての入院 私が出産を経験したのは34歳の時だった。初めての出産に向けて、順調に9ヶ月を過ごすことができた。しかし予定日を過ぎてもなかなか陣痛の様子がなかった。 主治医から「予定日を1週間過ぎた場合は入院して様子を[…]
待ち焦がれた出産の日 私は、第一子の出産に際し、自然分娩を希望していました。妊娠期間中は、赤ちゃんの成長を喜びながら、いよいよ会える日が近づいていくのを感じていました。 予定日が近づくにつれ、赤ちゃんに会えることへの期待と不安が[…]
祖母から伝えられた呼吸法
この呼吸法は、お産の際に母から教わったものだという。母の母、つまり私の祖母が、陣痛に効く呼吸法を教えてくれたそうだ。
祖母は田舎の昔ながらの産婆さんだった。常に妊婦さんの側に寄り添い、出産の手伝いをしながら、この呼吸法を口伝で伝えていったそうだ。
「人生で最も激しい痛みのひとつだと思うけれど、この呼吸法を気持ちと行いを一つにすれば、乗り越えられるからね」
そう言って祖母は、りんと実演してくれたという。深く腹式呼吸をしながら、吸っている間は気持ちを引き締め、吐く間に力を抜く。呼吸に集中することで、つらい陣痛の痛みから気を逸らし、スムーズに赤ちゃんを産めると教えられたそうだ。
昔の産婆さんは、呼吸法はもちろん、薬草を使った痛み止めなどのテクニックも受け継いでいたらしい。しかし時代とともにそういった方法は廃れ、いつしか呼吸法だけが一般的な陣痛対策として残されていったようだ。
実践した陣痛の呼吸法
私も母から教わった呼吸法を、陣痛に実践してみることにした。自宅で陣痛が少しずつ来るようになると、深呼吸しながら、痛みに集中するよう心がけた。
吸う時は気持ちを引き締め、吐く時は力を抜く。難しかったが、痛みを少しは和らげられた気がした。やがて間隔が早くなり、病院に駆け込むタイミングとなった。
陣痛室に入ると、もうそこは容赦ない痛みだった。思わず大声を上げそうになるが、咄嗟に呼吸法を思い出した。母の言葉を思い出しながら、あの呼吸のリズムを思い出そうとするが、簡単にはいかない。
しかし夫が手を握り、一緒に息を合わせてくれた。夫の手と呼吸のリズムに集中することで、痛みは少し和らいだような気がした。
そうして何とか最後の最後まで、この呼吸法に集中し続けることができた。祖母から母へ、母から私へと脈々と受け継がれてきた伝統の呼吸法だった。
次の世代へつなぐ伝統
やがて赤ちゃんが無事にこの世に生を受けた。あまりの安堵感に涙が込み上げてきた。そして陣痛の痛みを乗り越えられたことに、強い達成感を覚えた。
ほどなくして、母と赤ちゃんを抱きしめながら、言葉につまった。
「ありがとう。あの呼吸のおかげで、がまんできたわ」
母は嬉しそうに微笑んだ。
「よく頑張ったわね。産婆の祖母と、私の代からずっと続く呼吸法。これからはあなたの番だわ」
このように祖母、母、私と、脈々と伝統のテクニックは受け継がれていく。いつか私にも孫ができた時、きっとこの呼吸法を教えることになるだろう。
昔ながらの民間療法は、科学の発達とともに廃れていった。しかし陣痛の呼吸法だけは、今でも生きづつながれている。ママたちの心の支えとなり、伝統として次世代へとつながれていくのだ。
「里帰り出産VS立会い出産」夫婦で選んだ理想の出産方式 出産方式を決める夫婦の悩み 私たち夫婦は妊娠7ヶ月頃から、出産方式について本格的に検討するようになった。一般的には、里帰り出産と立会い出産の2つが最も一般的な選択肢だ。 私の実家は[…]
陣痛への不安から学ぶ呼吸法 初めての妊娠、順調に9ヶ月を過ごし、いよいよ出産の時が迫ってきた。待ち遠しい赤ちゃんの顔を想像するだけでわくわくした一方で、陣痛への不安も徐々に大きくなっていった。 「陣痛は本当につらいのかしら?」[…]